1.超弦理論を考えていくうえでどうしても解決しなければならない問題として、対称性の破れや4次元へのコンパクト化がある。例えば、ヘテロティック弦模型を考えるとゲージ対称性がE_8×E_8またはSpin(32)/Z_2であるため、現実の低エネルギーでの対称性SU(3)×SU(2)×U(1)が実現されるために、対称性の破れが起こらなければならない。又、超弦理論は10次元時空で定義されているので、我々の現実の世界を記述するためには、10次元から4次元への時空のコンパクト化がおきなければならない。そこで超弦理論に基づく統一理論の中でもっとも有力視されているオ-ビフォールド模型について詳しく調べた。オ-ビフォールド上の弦理論の完全な分類は現段階では不可能なので、ここではオ-ビフォールドポロジカルな性質に注目し、非自明な位相構造をもつオ-ビフォールド模型の分類を行なった。この研究により、今まで知られていなかったタイプのオ-ビフォールド模型が見い出され、その作用が具体的に位相不変量として与えられた。そしてその物理的性質も明らかにされた。 2.研究目的のひとつに「短距離における時空構造の解明」があるが、これに関しては量子重力の理論としてのWheeler-DeWite方程式を取り扱った。短距離での振舞いを調べるためにまずWheeler-DeWitt方程式に対するくりこみの処方箋を与えた。次にこの方程式をニュートン定数の逆べきで展開することによって解を求めた。その結果短距離では時空構造は、4次元的ではなく3次元的振舞いを示し、トポロジカルな相になることが示唆された。この結果は超弦理論とのつながりを暗示しており、非常に興味のあるところである。
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