研究概要 |
本研究を開始する前に、結合した調和振動子のsu(1,1)代数模型において、我々の提案している一種のスクイーズド状態である“mixed mode coherent state"を用いることにより、熱的効果を取り込むことが可能であることを示した。これにより、当初の研究目的であったフェルミオン系への拡張から実行した。簡単な原子核の模型であるLipkin模型、対相互作用する1準位模型、対称及び非対称回転子模型を取り上げた。我々の方法で温度効果を取り込むに際し、これらの模型から作られる全系のハミルトニアンはすべて同様な代数的構造を持つことを示した。すなわち、これらのフェルミオン多体系はボソン表現を用いることにより、su(1,1)の代数構造を持つことを明らかにした。この内容は英文雑誌に掲載予定である。上記の成果に基づき、su(1,1)代数が現れることに着目し、まずLipkin模型、対相互作用する1準位模型に対して、我々のスクイーズド状態によるアプローチでの温度効果の取り込みの可能性を調べた。その結果、Lipkin模型では粒子-空孔対、対相互作用する模型では核子対を近似的にボソンと見なしたときのボ-ス分布関数の形を通して温度効果を取り込むことができることを明らかにした。我々の方法は従来の虚時間を用いた有限温度の場の理論の扱いとは異なり、時間変数を残した扱いであるので系の時間発展を直接記述することが可能である。また、通常のThermo Field Dynamicsとも異なっており、熱浴との相互作用が導入されていることにより、エネルギーの散逸の様子等が記述できると期待される。この考えに基づき、初期時刻に、ある純粋状態に集中していたエネルギーが時間と共に他の状態に散逸していく様子を記述することが可能であることを、このモデルの範囲内ではあるが示すことに成功した。これは、英文雑誌に論文として投稿中である。
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