本研究はEGRET(GRO)が観測をはじめたばかりのGeV領域の宇宙γ線観測を1%以下のエネルギー分解能で観測するための装置の基礎研究を目的としている。目指している装置の構成はγ線によって引き起こされる電磁シャワーを止めるために充分な原子番号の高いシンチレータとシリコンのフォトダイオードをサンドイッチにしてシンチレータ全面を覆うような物を考えている。この構成が達成できれば光の収集率を高めることができると共に、シンチレータとシリコンの両方のエネルギー損失を出力できることで、サンプリングではない、不感領域の無い全吸収型のカロリメータが実現できることになる。この構造を最適化するためには、大面積で量子効率の高いフォトダイオードの開発が最も重要である。本研究では以前から用いている半導体シリコンでこのフォトダイオードの開発を行ってきたが、開発中にさらに良い素材を思いつき、少々方向転換を行うことになった。これはダイヤモンドを利用することである。ダイヤモンドは数10年も前から主に旧ソ連のグループによって開発が行われており、天然の物を使って放射線検出器として良好な結果が得られている。また、近年石油会社を中心として良好な人工のダイヤモンドも得られている。シリコンをフォトダイオード素材として使用すると、この中の電離損失による出力がシンチレータからの光による出力に比べて大きく、サンプリング・フラクチェーションの影響を受けてしまうことが問題となるが、ダイヤモンドのように原子番号の低い素材ではこの影響は少ない。また、この素材は誘電率がシリコンに比べて半分以下ということで低い容量が得られると共に、正孔のスピードが4倍速く、高速であるなどの利点も備えている。現在この人工ダイヤモンド素材を入手しチェックを始めたところである。
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