超伝導金属を用いた微小トンネル接合では、トンネル接合の抵抗値がユニバーサルな臨界抵抗値(6.45kOhm)付近を境に超伝導的なふるまいになるか絶縁体的に振る舞うかがきまる現象がある。この現象に、微小トンネル接合格子で考えられうる代表的な二種類のソリトンが関係している。二次元格子では、電荷ソリトンの間に存在する相互作用はlog rに比例する。渦糸ソリトンの間の相互作用も同様にlog rに比例する。距離に対してlog rに相互作用する二成分系ではKT転移が予想される。あるモデルによればこの二つのソリトンの間のKT転移の競合で超伝導絶縁体転移がきまるという。今回われわれはトンネル接合の二次元配列の幅を段階的に変えることで電荷ソリトンおよび渦系ソリトンの間の相互作用をかえてこのことが超伝導絶縁体転移にどのように影響を及ぼすかについて研究し、論文2編にまとめた。 有限幅の二次元配列の場合、電荷ソリトンは端においての境界条件を満たす必要がある。この境界条件は電場(電気力線)はサンプルの端から出ることができないということである。これは、サンプルの外側に考えている電荷と同符号の鏡像電荷を考えることで自動的に満たすことができる。この結果、電荷ソリトンの間の相互作用は強まる。一方渦糸ソリトンの場合にはサンプルの端から超伝導電流が流れ出せないというのが境界条件である。これは逆符号の鏡像ソリトンを考えることで自動的に満たすことができ、したがって相互作用は弱まる。サンプルの端の影響がこのように電荷ソリトンおよび渦系ソリトンでおのおの逆方向に働くため、拮抗するKT転移の存在下では超伝導、絶縁体転移の臨界抵抗値に変化がもたらされることが期待される。 われわれは電子線露光と斜め蒸着の方法により作成したアルミニウムのトンネル接合配列において長さを100列に固定し幅を2列から100列に変化させたときの超伝導絶縁体転移の臨界抵抗値を細かく調べた。その結果2列では臨界抵抗は1次元での値を示し、列を増やすと臨界抵抗値は上昇し100列では2次元での値になることが示された。この結果は電荷ソリトン、渦糸ソリトンの競合の描像を支持するものであると考える。
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