スピン1/2・二次元正方格子ハイゼンベルグ反強磁性体(S=1/2・SLHAF)の典型物質と考えられるSrCuO_2Cl_2の単結晶育成及び中性子散乱実験を行った。この物質は、これまで盛んに研究されているLa_2CuO_4が500K付近で正方晶-斜方晶転移を起こし正方格子が歪むのと比較して、低温まで正方晶構造を保持するため広い温度領域でS=1/2・SLHAFの特性を調べることが出来る。中性子散乱実験でスピン相関距離の温度変化を調べたところ、場の理論を用いて求められている理論値と広い温度領域で一致することがわかった。この結果はS=1/2・SLHAFの基底状態がネ-ル状態であることを示唆する。 一次元反強磁性体では特に最近接相互作用J_1と次近相互作用J_2とが競合する一次元反強磁性体についての研究を行なった。物質としてはSrCuO_2の多結晶試料を合成し、帯確率測定を行った。その結果、常磁率の零温度への外挿値が有限の値を示し、この物質の基底状態はスピン液体状態であることが示唆された。またこの物質に非磁性物質をドープし、有限の長さを持つスピン1/2・ハイゼンベルグ反強磁性鎖の帯確率を調べた。この結果、非磁性物質によって誘起される磁気モーメントが古典論から予想される値の約1/3になるという結果が得られた。これは基底状態のみではなく励起状態を考慮に入れると説明でき、量子効果が顕著に現れている現象であることを示した。この物質については他にも中性子散乱測定、μSR測定を行っている最中であり、今後も研究の発展を期待出来る。
|