研究概要 |
Pseudospectral法を用いて地震波動計算を行う際に発生する高周波ノイズを軽減するための,新しい数値微分(Fourier微分)法を開発した。従来のFourier微分法ではNyquist波数までの全ての波数を厳密に扱うため,計算を進めるにつれて高波数ノイズが蓄積し,計算が発散するという問題があった。このような計算ノイズの累積は計算領域の次元が高いほど顕著に現れるため,これまでのPseudpspectral法による波動計算では3次元波動計算ができなかった。本研究では,まず,Fourier微分でノイズが発生するメカニズムを,計算過程の可視化ビデオ画像をもとに調査した。そして,このノイズ軽減のために,Lanchosフイルタの利用と計算の過程に減衰の効果を組み込む工夫の二つについて検討した。また、Pseusoepectral法で一般に用いられている,不連続で安定なFourier微分法(対称法,古村・竹中,1992)が高波数ノイズを地表付近にトラップさせるという問題も明らかにした。次に,3次元波動計算を高速に行うための並列計算の可能性について調査した。現有の計算機環境では実用的な3次元計算が困難であるため,計算は8台のワークステーションクラスタを用いた疎結合の並列システム上で行った。プロセッサ間のデータ通信のようすをビデオ装置を用いて可視化し,並列化の効果が最大となる最適な分散形態を求めた。Pseudospectral法ではFourier微分が独立した計算の基本単位となるが,この演算を複数のワークステーションで分散処理させた場合にはデータ転送と回収の時間が全計算のボトルネックとなる。このため,分割数が4つ,転送データサイズは4KByte程度(Ethernetの場合)に計算の効率が最大となることがわかった。
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