大阪府北部から京都府中部にかけては近畿地方でも最も微小地震活動の活発な地域のひとつである。このうち大阪府高槻市から京都府亀岡市にまたがる地域でおきる微小地震には、初動の9〜12秒後に顕著な後続波をともなうものが多くみられる。 京都大学阿武山観測所観測網による波形データを使用してこの後続波の解析を行った。 ほぼ同じ深さの地震を比較すると、X相の走時は観測点を中心とした同心円分布にはならず、X相がなんらかの反射波であると考えると、その反射面は大きな傾斜をもつことを示唆している。水平動成分に卓越すること、地域的にごく限られた範囲に出現すること等から、X相は地殻内で反射してきたS波(SxS)であると考えて反射面の位置および傾斜をみつもると、深さ約20km、20度弱の傾きで北に傾斜している同一の反射面と考えてよいことがわかる。これらの反射面が北下がりに傾斜していることは、大阪平野部の地震にX相が現れないことや、ABUでX相がほとんど観測されない事実を幾何学的に説明する。 X相の振幅は直達S波の10〜40%に達する。反射面への入射角が小さいことを考えると、コンラッド面のような小さな速度コントラストでこの振幅を説明することは難しい。しかし、現在火山活動のまったくみられない近畿地方においてこのような反射面が、日光等の火山地域と同様の溶融体によるものであるとも考えにくい。 これらの反射面上の反射点の分布は丹波山地内の微小地震活動の最も活発な地域とちょうど重なり、有馬高槻構造線を南限とし、また西山断層系を東限としているようにみえる。また、これまで火山地域で発見されている反射面が地下の温度構造を反映するかのように微小地震の下限とほぼ平行となる傾向があるのに対し、この反射面では両者は斜交する。
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