地球磁気圏は地球固有の双極子磁場と太陽から流れ出すプラズマ流である太陽風が相互作用することによって形成されている。この太陽風との相互作用による磁気圏形成のモデルとしてリコネクションモデルと呼ばれるものが考えられているが、このモデルによると磁気圏尾部においてX-type neutral lineと呼ばる特徴的な磁場構造が存在する。その存在の有無を調べることはリコネクションモデルを検証する上で非常に重要である。X-type neutral lineが磁気圏尾部に存在する場合、X-type neutral lineを囲む磁気圏尾部のプラズマシートとローブの境界(plasma sheet boundary layer)はslow mode shockとなることが理論的に予測されている。本研究では地球磁気圏尾部のプラズマシートとローブの境界を地球磁気圏尾部探査衛星ジオテイル搭載低エネルギープラズマ分析器を用いて観測し、この境界がslow-mode shockであるかどうかを調査した。その結果、プラズマシートとローブの境界のうち約10パーセントが1次元slow-mode shockであることが判明した。このことからX-type neutral lineの存在が示されたといえる。slow-mode shockと判定できなかった残りの約90パーセントの境界については、slow-mode shockを判定する時に仮定したshockの一次元性や定常性が成立していないことが考えられる。このことからX-type neutral lineが定常的に存在しているという従来の描像よりはむしろX-type neutral lineが不安定かつ動的な性質を持っていると考えるべきであることが明らかとなった。
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