1、対馬海峡の新第三紀テクトニクスについて 対馬海峡に報告されていた大規模横ずれ断層の形成史は今まで不明であった。今回、五島列島及び対馬列島で行った小断層解析によって、新第三紀の応力場が明かになった。応力場から求めた対馬沖断層の形成史は次のとおりである。まず前期中新世(22-16Ma)に右ずれ移動があり、広域のN45Eの正断層が対馬沖で形成された。次に中期中新世から後期中新世(13-10Ma)にかけて左ずれがあり、広域のN45Eの褶曲ができた。 日本海のpull-apart opening modelから推定されている対馬沖断層系形成史と本研究の結果とは調和的である。 2、北部九州のhalf-graben構造について 小断層解析を基に、引張応力場におけるのN80Eの引張方向が明かになった。また福岡県脊振花崗岩体中に、マイロナイト帯を発見した。マイロナイの微細構造を用いて、ひずみ楕円体の形(Flinn parametre)と剪断senseを求めた。その結果、Flinn parametreは0に近い値を示し、senseはtop-to-the-NEになる。このマイロナイト帯は低角度正断層(detachment)と考えられる。上部地殻のhalf graben構造と中部地殻の低角度正断層との関係はこれからの重要な研究課題となる。 3、南部九州の応力場について 南部九州の鹿児島県尾久島に分布する中期中新世花崗岩類及び宮崎県に分布する後期中新世堆積岩類における小断層解析から新第三紀の応力場が明らかになった。対馬海峡の応力場と似ているので、対馬海峡のテクトニクスはフィリピン海プレートの沈み込みと関係している可能性がある。
|