研究概要 |
千葉県市原市,および千葉県夷隅郡大多喜町の養老川沿いに分布する上総層群の黄和田層と大田代層について,延べ3週間の現地調査を行い,1/50で岩相柱状図を作成し,岩相の詳細な記載を行った.また,黄和田層と大田代層のそれぞれに下部,中部,上部の3つの資料採取帯を設定し,各帯から約40試料,合計6帯から240試料を採取した. 各試料採取層準の絶対年代を,岩相による堆積速度の違いを考慮し,佐藤,高山(1988)のナンノ生層序基準面に基づいて推定した.その結果,約1.6Maから約0.85Maの間の試料が得られた.各試料について浮遊性有孔虫の抽出処理し,種を同定した.その結果,試料間隔が1千年以下という高い試料密度の群集データが得られた. これらの群集データについて主成分分析を行い,種間相関にもとづいて変動要因を推定した.その結果,この時代,浮遊性有孔虫群集は黒潮と親潮,津軽暖流の変動を反映して変動していたことが示唆された.また,このような種間の相関構造は黄和田層と大田代層の間では変化していないことが確かめられた.群集類似度と時間間隔の関係を調べ,群集の変動構造を推定した.その結果,各試料採取帯では,群集の変動周期に較べて試料採取間隔は十分に短いことがわかった.また,群集変動は約1万年の緩和時間をもつ定常ランダム変動に分類できる変動構造をもつことが明らかになった.また,緩和時間と変動の振幅には時間的な変化が認められ,日本海側の大桑層で認められたと同様に,約1.2Ma以降,振幅が増大することが認められた.
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