西オーストラリア、ピルバラブロックに産する始生代のチャートの化学組成と鉱物組み合わせについて詳細に検討した。研究対象であるポイントサムソン岬には、含チタン鉱物に富み、通常の堆積岩には見られない非常に低い(<5)Al203/Ti02値で特徴づけられるチャートが多産する。このチャート層においては、低いAl203/Ti02値を有する試料ほど、Ti02に富みまたZrに富むという特徴がある。加えて、特に多いTi02含有量を示す試料には、砕屑性の石英やジルコンが含まれている。このことから、チャート試料の非常に低いAl203/Ti02値はチタンに富む砕屑物の断続的な流入に根本的な原因があると推測される。一方、そのような砕屑物の起源としては、(1)チタンに富むマグマ源金属鉱床の後背地における存在、(2)かこう岩質岩石が極めて激しい風化変質作用を被ったことによる、チタン残留風化殻の形成、以上の2つの可能性が考えられる。希土類元素の存在度や、Zr/Ti02値、Yb/Ti02値等の指標からは(2)の可能性がより高いという結果が出た。この研究結果は、始生代における風化・変質作用が現在よりも激しかったこと示す具体的な証拠を提示している。しかしながら、始生代の風化・変質作用といえども風化殻におけるAl-Tiの分別作用を引き起こすほどには激しくなかったという従来の見解とは相違しており、その点については今後さらに詳しい検討が必要である。
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