ナトリウムクラスターイオン、Na_n^+、と希ガス原子との衝突過程について研究した。クラスターイオンのサイズを選別し、そのクラスターイオンの衝突エネルギーを制御しながら希ガス原子を衝突させ、絶対反応断面積および生成イオンの分布を測定した。 その結果、Na_n^+からNa原子またはNa_2の解離が起こること、その分岐比はクラスターサイズの偶奇に依存することが分かった。特に、電子的に閉殻構造であるNa_9^+ではNa原子の解離エネルギーとNa_2の解離エネルギーがほぼ同じであり、1eV以下の衝突エネルギーではNaの解離断面積とNa_2の解離断面積の比は約1対2であった。これは、電子的に閉殻構造であるNa_9^+では、価電子の間の対相互作用が小さいためであると考えられる。一方、衝突エネルギーの増加にともなってNaの解離断面積が非常に小さくなり、Na_2の解離断面積が非常に大きくなった。これは衝突励起による変形によって対相互作用が強められるためであると考えられる。 また、Na_7^+、Na_5^+などの電子的に開殻構造である奇数サイズのクラスターイオンでは衝突エネルギーに関係なく常にNa_2の解離のみが観測された。一方、Na_8^+などの偶数サイズのクラスターイオンNa_n^+ではNaの解離のみが観測された。これらの実験事実は価電子の対相互作用によって説明される。
|