1.メンチルエステルをキラル補助基として有するホスホラン1のジアステレオマ-を再結晶により針状結晶とプリズム状結晶に分割することができた。後者の結晶のX線結晶構造解析を行ったところ、1ーメンチル基との相対関係よりリン上の絶対立体化学がR配置であることがわかった。それぞれのジアステレオマ-をLiAlH4で還元したところリン上にのみ不斉を有する立体化学が明確である10-P-5型のホスホランのエナンチオマー対の初めての例として2を得ることができた。これらのアルコール体をモッシャーエステルに誘導することによりそれぞれのアルコール体が光学的に純粋であることが確認され、位置異性化が全く起きていないことがわかった。同様にして、R-フェネチルアミンをキラル補助基として有するホスホラン3のジアステレオマ-を再結晶によりプリズム状結晶と板状結晶に分割することができた。後者の結晶のX線結晶構造解析を行ったところR-フェネチルアミンとの相対関係よりリン上の絶対立体化学がR配置であることがわかった。それぞれのジアステレオマ-に対して低温下メチルリチウムを反応させたところ10-P-4型のホスホラニド4を経たと考えられるリン上にのみ不斉を有する立体化学が明確である10-P-5型のP-Hホスホランのエナンチオマー対の初めての例として5を得ることができた。これらのP-Hホスホラン5を絶対立体化学を決定することができた上記の1ーメンチルエステル1にホスホラニド4を経て誘導したところホスホラニド4及びP-Hホスホラン5が光学的に純粋であり、立体配置が保持されていることが確認された。このことより、リン原子の直接的な変換を伴っているのも関わらず位置異性化が起こらず、一般にホスホラニドへのアルキル化反応が立体保持で進行することが証明できた。
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