研究概要 |
(1)申請当初予定していたアゾベンゼンやチオベンゾフェノンを骨格に持つ有機ビスマス化合物は合成が困難で達成できなかった。そこでアセトフェノンを骨格に持つ有機ビスマス化合物1を設計、合成し、化合物2、3への変換を行なった。ビスマス原子上にハロゲン原子を導入すると(化合物3)カルボニル基のビスマス原子への配位によりπ電子系に強い分極(分子内電荷移動状態)が起こるため、化合物の呈色が期待できる。実際、化合物2は黄色の結晶であったが化合物3は赤紫色の結晶として得られて来た。以上の結果から、ビスマス原子上の置換基効果を利用して配位を調節すれば化合物の電子状態(発色特性)が制御できることがわかった。今後はこれらの化合物の発色特性をX線構造解析や電子スペクトルにより検討し、機能性分子としての可能性を探りたい。 (2)上記の研究と平行して、ビスマス原子上にキラル中心を持つ有機ビスマス化合物の合成を行なった。具体的には、光学活性アミンを配位子として導入することで2種のジアステレオマ-混合物へ誘導し(化合物4)その構造をX線構造解析により明らかにした。(Organometallics,1995,in press)
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