イタチを導入して約10年が経過した三宅島において、かつて豊富にいたオカダトカゲの生息状況を再調査するとともに、オカダトカゲの主な餌である地表徘徊性の無脊椎動物の種類と量的構成を落とし穴トラップによって調査した。さらに、同様の調査をイタチが導入されていない新島と在来のイタチが生息する伊豆諸島でも行った。イタチの食性は野外で採取した糞を分析することで調査した。このようにして得られたオカダトカゲの生息状況、オカダトカゲの餌動物の種構成と量、イタチの食性をイタチ導入直後の1980年はじめの調査資料と比較検討した。 その結果、三宅島においてはイタチ導入前に1時間あたり100個体以上のオカダトカゲが観察されていたのが、導入後約10年を経過して、オカダトカゲはほとんど絶滅状態に陥ってしまったことがあらためて確認された。コントロールとしてオカダトカゲの生息状況を調査したな新島、神津島、大島ではこのような個体数の変化は見いだされず、三宅島におけるオカダトカゲの激減がイタチの捕食によるものであることが確実となった。 三宅島に導入された直後のイタチの糞には、オカダトカゲが高い確率で含まれていたが、現在では昆虫など節足動物が主流を占め、オカダトカゲはほとんど検出されなかった。 地表を徘徊する小動物の種類構成が、イタチ導入前と10年後で劇的に変化したことが明らかにされた。特にミミズ食のオオヒラタシデムシの増加には著しいものがあった。 さらに、当初の調査計画に無かったことであるが、小笠原諸島に帰化した爬虫類であるアノールトカゲの生息状況を、これらの島にあらたに定着し始めたモズの生息状況とともに調査した。それによって、帰化後急激に個体数を増加させたアノールトカゲが、モズの定着した場所では局地的に激減したことが明らかにされた。 この2点から、捕食者の人為的導入あるいは自然な定着が餌動物の個体数、ひいてはさらにその餌生物へ著しい波及効果をもたらすことが明らかにされた。
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