強い休眠を持つ正常型のコムギ、北系1354の完熟種子胚から調製した可溶性タンパク質を二次元電気泳動法で展開し、非休眠突然変異系統で消失したタンパク質、ポリペプチドeを精製した。リジルエンドペプチダーゼによる限定分解で得られたポリペプチドeの断片、2種のN末端アミノ酸配列を、21および25残基決定した。 アミノ酸配列の情報を基に縮重オリゴヌクレオチドプライマーを作成した。北系-1354の種子胚から調整した一本鎖cDNAを鋳型としたRT-PCR法により、約330bpの増幅断片を得た。このプライマーよりも10bp内側にあると予測される配列を基に第2のプライマーを作成し、1回目のPCR反応で増幅された断片を鋳型とした2回目のPCRを行ったところ、約10bp小さい断片が増幅された。 得られたDNA断片をT-ベクターに組み込み、塩基配列をジデオキシ法決定したところ、目的とするポリペプトチドeのアミノ酸配列から推定される塩基配列とほぼ一致した。この増幅断片と相同性を持つ遺伝子を検索したが、有為な同性を持つ即知の遺伝子は見いだせなかった。 増幅DNA断片をプローブとし、北系-1354種子胚のポリ(A)+RNAから作製したcDNAライブラリーをスクリーニングし、完全長と推定される8クローンを得た。これらの制限酵素地図を作成したところ、少なくとも3つのグループに分類できた。この8クローンを試験管内転写、翻訳によりタンパク質とし、二次元電気泳動で分離したところ、ポリペプチドeと同一の移動度を示す1クローンを見いだした。ポリペプチドeの完全長cDNAの単離に成功したため、現在、このcDNAの全塩基配列の決定を行っている。
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