1.ミオシン活性のカルシウムによる制御 ユリ花粉管から170-kDa重鎖から成るミオシンを単離、精製して、その活性のカルシウムイオン感受性を解析した。その結果アクチンで活性化されるATPase活性、及び運動再構成法を用いて解析したミオシンによるアクチンの滑り活性がカルシウムイオンにより阻害された。阻害が起こるカルシウムイオン濃度は5uM程度であり、この値は車軸藻及びユリ花粉管内で起こっている原形質流動を阻害するカルシウムイオン濃度と一致している。従ってカルシウムイオンは、アクチン系にではなくミオシン系に作用することにより、原形質流動を制御していることが明らかになった。精製した植物ミオシンを用いてミオシン活性のカルシウムイオン感受性を解析したのは、本研究が初めてである。現在カルシウムイオンによるミオシン活性の制御機構を分子レベルで解析しているところである。 2.ミオシンの植物細胞内における存在様式の解析 このテーマに関しては、米国ジョージア大学B.A.Palevitz博士のグループと共同研究を行った。170-kDa重鎖からなるミオシンは、その抗体を用いたイムノブロット法により、ユリ花粉管だけではなく、他の多くの被子植物(タバコ、シロイロナズナ、ツユクサ、ニチニチソウ等)の細胞内に存在すること、また間接蛍光抗体法により、ミオシンは主に、アクチン繊維上に存在する様々な大きさの細胞小器官あるいは顆粒の表面に局在していることが明らかになった。これらの結果から、170-kDa重鎖から成るミオシンは広く高等植物の細胞内に存在し、原形質流動のモーターとして機能していることが示唆された。
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