研究概要 |
本研究では,プラスチックフィルムの破壊過程をき裂先端クレーズ破壊の微視的観点に立脚して観察,測定している.このため,まず試験片のマイクロスコープ観察を可能にした小型引張試験機を製作した.ついでポリプロピレンおよびポリカーボネイト供試材について,母材およびデューパネル光コントロールウェザ-メータにて紫外線照射したものについて,き裂進展試験を行い,以下の結論を得た.(1)PC材およびPP材とも紫外線照射量があるしきい値を超えると材料は急激に損傷を受けて劣化する.すなわち,PC材では,照射量5750kJ/m2付近までは紫外線照射量が増加するのにつれて,破断伸びは徐々に減少したが,最大荷重はほとんど変動しなかった.しかし,約5750kJ/m2を超えると破断伸びおよび最大荷重は共に急激に減少した.一方PP材では,2000kJ/m2辺りまでは最大荷重および破断伸びは殆ど変化を生じなかったが,それ以上の照射量では破断伸びおよび最大荷重は急激に減少した.(2)き裂進展試験において,き裂が進展し始める前に,き裂先端領域において,PC材では塑性域の拡がりを生じたが,PP材ではこのような現象を生じなかった. (3)PP材およびPC材ともに,き裂進展中のCTOAはほぼ一定であったが,進展速度は徐々に増加した.(4)紫外線照射したPC材の引張試験の結果,3種類の破壊過程:き裂先端の塑性域はリガメント全域まで拡がり,き裂はこの塑性域中を進展しながら破断に至る;初め塑性域中を進展していたき裂は,ある時期から急速に進展しはじめ,塑性域を超えて脆性的な破壊を生ずる.この過程でマイクロクラックがボイドなどを生ずる;き裂先端における塑性域の発生がほとんど見られない脆性的不安定破壊が起こる.
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