研究概要 |
軟鋼中の応力の面内分布を非破壊的に評価する方法の確立を目的として,外部磁場による表面SH波の音速および振幅変化を調べた.外部磁場による超音波の音速変化は集合組織の影響を受けず,残留応力の非破壊測定に適している.従来は板厚方向に伝ぱする超音波を用いていたため,測定点は超音波の送受信子の位置で決定され走査は容易ではなかった.本研究では,板の表面に沿って伝ぱする表面SH波を用いることにより,電磁石の移動による測定点の走査を試みたものである.表面SH波の振動は表面内で起こるため,他の表面波とは異なり伝ぱ経路に電磁石を設置する影響を受けないことが期待される. 外部磁場による音速変化,振幅変化は非常に微小であるため,表面SH波の送受信はアクリルシュー付きの圧電素子を直接試験片に貼り付けて行った.磁極寸法および磁極間距離の小さな電磁石により表面SH波の伝ぱ経路の一部分を磁化し,磁化にともなう音速および振幅の変化を測定した.測定精度向上のため,受信波形をデジタルオシロスコープで取り込み,音速変化,振幅変化を求めた. 負荷応力下での測定の結果,伝ぱ方向に磁化した場合も伝ぱ方向に垂直に磁化した場合も伝ぱ時間および振幅の変化はそれぞれ0.2nsec.,0.02dB程度と小さく,応力の効果はさらに小さいことがわかった.応力分布を持つ測定対象の例として4点曲げ試験片を用い,電磁石を走査させることにより応力分布の測定を試みたが,測定点間の差が小さく,応力分布を評価するまでには至らなかった. 以上の問題点を解決するためには,さらに強力な電磁石を用いること,より高精度な送受信子を用いることなどが有効であると考えられる.
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