ピッチング現象に影響を及ぼす影響因子としては、接触荷重の大きさ・摩擦力の大きさ・表面粗さ・潤滑状態・材料定数・材料の表面処理・介在物など多くの因子が指摘され、さまざまな研究結果が報告されてきた。そして、これらの因子が互いに影響を及ぼし合っていることも明らかになってきている。しかし、それらの影響の定量的評価となるといまだ十分とは言い難い。 本研究は、非接触の疲労現象、特に高強度鋼の疲労現象に影響が大きいことが知られている介在物が物体表面の接触を伴なう疲労現象においていかなる影響を及ぼすかを定量的に明らかにすることを目的として行った。 本年度から新しい転がり疲労試験機の稼働が始まったばかりでまだ十分な数の実験が行われたとは言い難いが、その実験結果を考察するうえで新しい現場用顕微鏡が重要な役割を果たした。すなわち、最初は非常に小さいき裂(≦100μm)が接触表面に発生し、それがゆっくり成長してある程度の大きさ(≧数mm)に達すると急激に成長してピッチングを形成する様子が今回の実験により観察できた。き裂が急激に成長する限界の大きさとその原因を突き止めることはピッチング現象の解明のために重要な知見を与えることが予想される。 しかし、当初の目的の一つであった転がり試験片を転がり疲労試験機に取り付けたまま、直接介在物検査を実施する方法を確立することは達成できなかった。その原因は、試験片表面の磨き仕上げが困難であったことと、接触面の情報を取込むには既存の装置では容量が十分でなかったためである。そのため、介在物の大きさがピッチング現象に及ぼす影響の定量的評価を行うことはできなかった。これらの点は、来年度以降の問題点として検討して行く予定である。
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