本研究の目的は、引張や曲げなどの静的負荷条件下ならびに衝撃などの動的負荷条件下における試験を実施して、エンジニアリング・プラスチックス(以下、エンプラ)の破壊強度に及ぼす負荷様式および負荷速度の影響を調査するとともに、その破壊形態にも注目して負荷条件との関連性を検討するものである。本年度は実験の初期段階であることから、実験環境の整備と基礎実験を実施して、以下の知見を得た。 1.静的負荷条件下における破壊強度と破面形態 汎用プラスチックスの一種であるPMMAを用いて、室温のもとで試験片厚さならびに速度を変化させた引張試験を実施した。その結果、この材料は降伏点を示さず、縦弾性係数ならびに引張強さには速度依存性があり、厚さの影響も認められる。最大変位(最大ひずみ)にも速度とともに厚さの影響がある。また、破断面は形態的に見ていくつかの領域に分類が可能であり、それらの領域の面積ならびに凹凸の程度は明らかに速度ならびに厚さの影響が認められることなどがわかってきた。 2.動的負荷条件下における破壊強度と表面観察 ゴム粒子添加による強じん性エンプラの一種であるABSを用いて、室温のもとで速度を変化させた引張ならびに圧縮試験、ホプキンソン棒法による衝撃試験を実施した。その結果、この材料は降伏点が見られ、下降伏点は圧縮では不明瞭であるが引張では明瞭に現われる。縦弾性係数および上降伏点はともに速度依存性が認められ、縦弾性係数は引張の場合が、降伏点は圧縮の場合が高い値を示す。白化現象が認められ、速度が増すにつれて縞紋様が増加し、全体が白濁へと変化することなどがわかってきた。 なお、今後は今回の材料に加えて種々の材質に対する破壊強度を定量的に調査して、強度の信頼性評価を行う予定であり、それらの結果については逐次公表していくつもりである。
|