半球型銀円柱を高温物体とした水中急冷過程における超音波照射実験から、膜沸騰伝熱域における液中超音波照射による伝熱の促進と極小熱流束点の制御を含んだクエンチ点の高温化は現在までに確認されている。この膜沸騰伝熱促進のメカニズムに関しては、高温伝熱面を覆う蒸気膜が超音波射によって攪乱および薄化されている事が瞬間写真等を用いた様相観察から確認されている。そこで本研究では伝熱促進のメカニズム解明の一環として、高温伝熱面を覆う膜沸騰蒸気膜厚さの変化を電気的に測定する装置の試作を行った。 膜沸騰蒸気膜厚さの変化は、図1に示した様に2対の電極間の距離の変化をコンデンサーの容量変化として電気的に検出する事で行う。半球型銀円柱は予め電気炉で約700℃に加熱されており、導電性を持たせた液中(水)中に投下して膜沸騰状態を実現した。高温物体の温度は一方の電極リ-ド線も兼ねたシース型熱電対によってモニターを行い、同時に膜沸騰蒸気膜を誘導体とするコンデンサーの容量変化は微少変位計によって電気的に検出する。両者の電気信号は、ペンレコーダーまたはデジタルストレージオシロスコープによって確認・記録する。 装置の試作および実験の結果、先ずはじめに膜沸騰状態における直流的な2電極間の絶縁性の確認の結果から試験系に電気的なコンデンサーの存在が認められた。次の容量変化に関しては、微少変位計の検出範囲と作成した系における容量変化の幅と値に対する調整の不十分さより、絶対的な蒸気膜厚さの算出は未確定となった。 今後の方針として、(1)微少変位計の十分な調整、(2)絶対的な蒸気膜厚さの検定、等を行う必要がある。
|