組立作業などにおいては、マニピュレータ(ロボットアーム)の位置決め精度より小さなすきましかない部品の挿入などが要求されるため、マニピュレータの手先に作用する外力に応じて手先変位が生じること(順応動作)が重要となる。しかしながら通常のマニピュレータは、動作範囲は大きいものの、慣性の大きさのためにこの順応動作には適さない。 本研究においては、通常のマニピュレータをマクロマニピュレータとして扱い、その先端に慣性が小さく順応動作に適するマイクロマニピュレータを装着した冗長マクロマイクロ型マニピュレータを議論の対象とした。そしてマクロ部の動作範囲の大きさと、マイクロ部の順応動作の実現性の両者を活かした運動制御法を確立することを目的とし、運動制御法の開発と制御法に適したマイクロ部の試作を行った。 運動制御法の開発はインピーダンス制御法に着目して行った。インピーダンス制御法とは、手先に望みの機械インピーダンスが実現されるような関節駆動力を算出することにより、手先外力が作用する際の手先変位の生じやすさを制御する方法である。通常のインピーダンス制御は、手先部だけに対して望みの機械インピーダンスを指定するが、開発した制御法においては、冗長マクロマイクロ型マニピュレータの手先部の他にマクロ部先端に対して望みの機械インピーダンスの指定を行なえばよいことがわかり、以下の特性を実現することが可能となった。1)マイクロ部の小さな慣性が有効に作用し、過大な駆動トルクを必要とすることなく手先の順応動作が実現できる。2)マイクロ部から伝わる力によりマクロ部が指定された動作を行い、マイクロ部の動作範囲の狭さが補償される。 また、マイクロ部の試作においては以下の2点を考慮した。1)対象としたマクロ部の動作帯域が1〜2Hz、実現しようとする動作帯域が5〜10Hzであること。2)マクロ部とマイクロ部が直列構造であり、制御法が手先外力の作用する状況を対象としたものであることを考慮し、マクロ部と同程度の手先力である10Nが発生できるものであること。これらのことより、マイクロ部の試作においては実現可能な手先力と手先加速度に着目した。動作試験により、所望のマイクロ部が開発できたことが確認できた。
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