本研究は、原理的にスイッチング損失を発生せず、高スイッチング周波数化と高効率を両立できる方式として提案されている共振DCリンク方式を整流回路に適用し、入力電流波形の改善を図ることを目的に実施したものである。まず、共振DCリンクインバータの主回路をもとに、共振DCリンク整流回路の主回路および交流入力電流制御回路の試作を行った。次に、この試作装置を用いた実験を行い、交流側電流の制御性や指令値急変時などの過渡時の共振リンク過電圧の発生などを詳細に検討し、交流側電流制御性能の基本的検証を行った。続いて、直流出力電圧を一定に維持する出力電圧制御系を付加し、実際の電圧形整流回路と同様の状態における動作の確認を行った。さらに、数種類の共振素子定数条件について、入力電流ひずみと共振リンクの共振周波数および特性インピーダンスの関係などを実験的に明らかにした。また、共振リンクの定数を種々変えた場合の特性をコンピュータシミュレーションによる結果で補充した。これらの結果を踏まえ、入力電流ひずみを低減する方策として、試作装置で用いた単純な瞬時値比較方式の改善策に対して、入力電圧、ブリッジの交流側電圧、入力電流およびその指令値を三相二相変換し、電流誤差の少ない場合にゼロ電圧ベクトルを出力する方式や、1共振周期後の電流予測に基づく三相一括制御などを行う場合について、入力電流ひずみの低減効果を詳細に検討した。その結果、改善した制御法の適用により、さらに入力電流ひずみの低減が達成されることが示された。 以上の研究成果により、共振DCリンク方式を整流回路に適用することの基本的な妥当性を示すとともに、各素子パラメータが入力電流ひずみや直流リンク過電圧に与える影響を明らかにした。さらに、これらの検討結果を踏まえ、入力電流ひずみの低減策に関する指針を得た。以上の成果が得られたことにより、本研究の当初の目的は達成されたものと考える。
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