レーザー誘雷の研究では誘雷塔先端よりレーザープラズマ中にリーダを生成することが第1の条件となる。炭酸ガスレーザーを大気中に照射すると大気中のダストが核となりビーズ状のプラズマチャンネルが生成される。ビーズ状のプラズマは時間とともに膨張し、次第に冷えながら消滅する。この場合隣接するビーズ状プラズマとの距離が短ければ重なり合い電離チャンネルを形成するが当研究所で生成されるプラズマ間隔は数mm程度で重なり合うまでに遅延時間を有し、またプラズマチャンネルの放電誘導効果は数100μsと短いために放電誘導効果が弱いことが挙げられる。本研究では炭酸ガスレーザーを照射し、レーザープラズマチャンネルを生成した後、炭酸ガス、ガラスレーザーを光軸に沿って照射する。これにより先に生成したプラズマを再加熱しチャンネル状のプラズマを生成することによって放電誘導効果を増加させることを目的に実験を行なった。レーザープラズマ中の存在する電子の寿命を調べた。電子は炭酸ガスレーザーによる高周波加熱理論によって電離されプラズマ化する。初期の段階ではN^+、O^+及び電子はプラズマ状態であるが再結合や拡散によってプラズマ温度が低下する。その中で電子は中性原子の窒素、酸素に付着しO_2^-を形成する。O_2^-の寿命は長く数msであり、この原子が放電誘導に影響を及ぼしていると思われている。またプラズマ中のレーザー光のカットオフ密度は炭酸ガスレーザーでは10^<19>cm^1、ガラスレーザーでは10^<21>cm^1であり、追加熱レーザーにはカットオフ密度の高いガラスレーザーが適していると思われる。 まず炭酸ガスレーザーを照射した後、同様の炭酸ガスレーザーを照射する実験を行なった。時間差は約200nsである。生成したプラズマの発光をストリークカメラで観測した。初期に生成したプラズマ発光の後、追加熱によるプラズマが再発光していることを確認した。また静止写真によって追加熱を行なったビーズ状プラズマの直径が増加していることを確認した。次に炭酸ガスレーザーを照射した後、ガラスレーザーを照射する実験を行なった。ガラスレーザー照射の時間遅れは5〜20μsとした。このときのレーザープラズマチャンネルの軸方向に流れる電流をバイアス電圧を印加して測定した。先に照射した炭酸ガスレーザーによって生成されたレーザープラズマによって電流が流れ、その後ガラスレーザーを照射した場合には若干のプラズマ再加熱の効果である電流の増加が見られた。しかし追加熱用のレーザーは炭酸ガスレーザーと同一の光軸を伝播するために炭酸ガスレーザーを生成されたプラズマによって空気の希釈化が生じガラスレーザーの波面が乱されることが生じる。この点では波長の長い炭酸ガスレーザーが有利であると思われる。 本研究では炭酸ガスレーザーで生成したプラズマチャンネルを炭酸ガス及びガラスレーザーを用いて追加熱を行なう実験を行なった。炭酸ガスレーザーを追加熱レーザーとして用いた場合は遅延時間が短いこともありビーズ状プラズマの直径が増加し追加熱の効果が確認された。またガラスレーザーを追加熱レーザーとして照射した場合には追加熱の効果を確認したが先に生成したプラズマによる空気に希釈化によってガラスレーザーが散乱を受けることを確認した。
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