1.プラズマCVD法によりテトラエトキシシランから堆積したSiO_2薄膜(TEOS-SiO_2薄膜)の光学特性を調べた。研究には、シンクロトロン放射光を用いた。堆積温度が600℃の時、7.6eVの光吸収帯と、7.6eV光の励起による4.4eVの発光帯が観測された。7.6eVの光吸収かつ4.4eVの発光は、酸素空孔(≡Si-Si≡)を含むバルクシリカでのみ観測が報告されている現象であるため、堆積温度が600℃のTEOS-SiO_2膜内には酸素空孔が存在していることが判明した。 4.4eV発光は小さい平均時定数(〜3ns)をもっており、その減衰曲線は拡張指数関数によって表されることが判明した。このことは、発光の減衰時定数が幅広く分布していることを示している。一方、バルクシリカでは、4.4eV発光の減衰曲線が単一指数関数で表されることから、4.4eV発光の時定数の分布が、TEOS-SiO_2薄膜の構造の不均一性を反映したものであることを明らかにした。 2.TEOS-SiO_2薄膜の真性破壊電界と構造欠陥との関係を調べた。堆積温度は400℃を越えると真性破壊電界は減少した。一方、7.6eV吸収帯及び7.6eV光励起による4.4eV発光帯の詳細な観察から、400℃を超える温度で堆積された全てのSiO_2には、酸素空孔の存在が確認された。よって、酸素空孔と破壊電界との間に因果関係のあることが推定された。さらに、酸素雰囲気下での熱処理により、4.4eVの発光帯が小さくなることから、酸素空孔の減少が示唆され、それにともない、真性破壊電界は上昇した。これらの結果から、酸素空孔が真性破壊電界を低下させることが明らかとなった。
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