研究概要 |
本研究は、化合物半導体整流ダイオードの性能を予測し、低損失かつ高周波動作の可能なパワーショットキダイオード(SBD)を開発する目的で、遂行されたものである。以下に、研究の背景・意義及び成果の概要を記す。 1.研究の背景と意義 スイッチング電源のキーデバイスである整流ダイオードには現在のところSi-SBDが使われているが、その特性改善は理論限界に近づいており、ますます増大する高効率化と高周波化の性能向上の要求には対応が難しくなってきた。そのため、新しい整流ダイオードの開発が必要となっている。本研究により高性能のInP-SBDを実現するための設計・製作技術を確立できるので、スイッチング電源の高性能化に果たす意義は大きい。 2.本研究の成果の概要 (a)代表的な動作条件(電圧5V,電流5〜30A,動作温度40℃,自然空冷)を想定し、Si-SBDと同じ直列抵抗になるように、化合物半導体(GaAs,InP)SBD構造の最適設計を行った。Si-SBDと同じ電流密度にとる構造が適当なトレイドオフとわかった。 (b)上で設計した化合物半導体SBDによるスイッチング電流回路の動作をシミュレーションし、シリコンSBDと比較して性能の改善程度を把握した。化合物半導体SBDの最高整流周波数は同じ損失なら約20MHzとSiより2.5倍以上優れている。また、フォーワ-ト形DC-DCコンバータ回路を想定した場合、94%と高い整流効率が得られる。最大整流効率の温度係数は-0.02%/Kである。 (c)実際のSBDをつくる上でのポイントは、低いバリア値(0.4〜0.55eV)のショットキ接合を大面積上に歩留まり良く形成することにある。実現するために、開発した電解メッキ法を用いた。この技術は、表面欠陥を避け、GaAsとInPの上に理想因子n<1.1という良好なSBDを形成した。InP-SBDの障壁値が金属の仕事関数に依存し0.4〜0.8eVの範囲をカバーすることができ、InP整流ダイオードの実現が比較的に容易にであることがわかった。一方、GaAs-SBDの障壁値が1eVのところにピンニングされ、整流ダイオードの実現がなかなか難しい。
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