光アイソレータ等の非相反素子を製作するために有望な材料である磁性ガ-ネット膜は、スパッタエッチングを施してリブ導波路を製作すると極めて大きな損失を有し、光の導波が困難となる。導波路形素子実現のため、膜の特性を損なわない三次元加工プロセスを一刻も早く確立することが望まれる。そこで、本年度は、磁性ガ-ネット膜の損失増加の機構を調べること、及び損失増加を抑制するための新しい導波路製作方法の確立を目的として研究を行った。それぞれについて、以下にその成果を述べる。 1. 損失増加の機構の分析 磁性ガ-ネット膜に金属マスク上からスパッタエッチングを施し、膜表面に存在する構成元素の結合状態の変化を共同利用のX線光電子分光装置により分析した。結果より、イオン衝撃を受けた金属マスク下部の鉄イオンの結合エネルギーのピークが低エネルギー側にシフトしており、鉄イオンの価数が通常の三価から二価に還元されていることが分かった。二価の鉄イオンは、ガ-ネット膜の吸収損失を増加させることが知られている。 2. 損失増加を抑制するための製作過程の確立 金属マスクの代わりに、私達が提案している導波路形光アイソレータにおいてクラッド層として用いるSiO_2をマスクとしてガ-ネット膜をスパッタエッチングするように製作過程を改良した。SiO_2に導波路パターンを転写するときには、CHF_3ガスによる反応性イオンエッチングを採取した。この過程により製作した直線リブ導波路は低損失であり、実際の素子製作に用いることができる。
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