本研究では、二つの方向について研究を進めた。 一つは、広域ネットワークで共有される情報の更新の告知についての研究である。現在のインターネットでは、分散的に存在する情報が更新された場合、それを網全域に告知する現状では機構はない。したがって、キャッシュ機構を用いた場合、キャッシュ内の情報が依然として最新で再利用可能かどうかは、情報源を定期的に参照しにくいことで確認するしかない。このような方式では、ネットワークに対して多大なトラヒックを発生させることになる。本研究では、インターネットのマルチキャストの機構を利用して、情報の更新を広域ネットワーク内に同報通信し、その情報をキャッシュ管理に利用する機構を開発し、WWFS技術に統合した。これについては、国際会議ICOIN-9においてその技術を報告した。 もう一つは、現在インターネットにおける情報共有技術でもっとも多用されているWWW(World Wide Web)について、より高速な応答をするための新たなキャッシュ戦略についての研究である。この研究では、情報の先読みを積極的に行う戦略を採用し、その戦略を適用したWWW Proxy agentを開発し、その性能を評価した。現在のバ-ジョンでは、先読みによって現在の2倍のアクセストラヒックが発生するが、平均して応答時間を5秒程度短縮することができた。現在の方式では、単純な先読みであり、今後利用頻度に基づいた先読みを実施することで、無駄なトラヒックを削減することができると期待している。この研究については、実際にWWW Proxy agentを開発した修士課程の学生によって、本学の修士学位論文として報告されたが、外部では報告を行っておらず、現在その準備を進めている。
|