本研究では、数学の組み合わせ論の基本概念である同型性を、問題解決における状態表現の抽象化に適用して、問題解決を効率化する手法を確立する。この目的に対し、本年度は以下の研究を行った。 (1)同型性に基づく抽象化の理論構築 数学の同型性の性質を、状態空間での問題解決に拡張するための理論を構築した。具体的には、対称性の高い組合せ問題に対し、同型性に基づく抽象化を行うと、状態空間で同型な状態が規則的に分布する。この時、互いに同型でない状態の集合からなる局所的な部分空間をとると、状態空間全体が同型な部分空間でおおわれ、かつこの同型な部分空間を1点に縮約した抽象化を行うと、良い抽象空間を生成できることを理論的に明らかにした。 (2)状態空間の同型な部分構造の解析手法 提案した理論に基づき、状態空間中の1状態から探索を行い、同型でない状態を全て求めるという、局所的な探索で同型部分空間を効率よく求める方法を提案し、プログラムでその有効性を確認した。 (3)再帰的な同型性を用いた抽象空間の階層化 同型性は、数学的には同型状態間の置換で表される。置換の集合がいくつかの群をなすことに着目し、抽象化を群の数だけ繰り返し再帰的に行うと、抽象空間が階層的に解析できることを発見し、プログラムでその有効性を確認し、従来は解析されていなかった、状態空間の再帰的な構造を視覚化することができた。 (4)抽象化階層を利用した抽象化問題解決 上位の抽象空間でラフな抽象プランを作成し、下位の抽象空間に移って抽象プランの詳細化を行う。この操作が単調に行えることを理論的に示し、効率の良い問題解決ができる手続きを明らかにした。 (5)同型性を利用した集団における協調行動学習 本手法の今後の応用分野として、複数ロボットの協調行動学習のシミュレーションを行い、実験用のロボットを製作した。実ロボットによる学習実験は今後の課題である.
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