研究概要 |
本研究は人間に心理的脅威を与えないロボットの運動計画法を開発するため,以下のように研究を進めた. 1.タイミングベルトを用いた簡易的な一自由度移動ロボットを試作し,台形速度パターンにより運動できるようにした.台形速度パターンはロボットを動作させる最も基本的なもので,加速度,最大速度を変更することで様々な動きが可能となる. 2.ロボットの動きを心理的に評価する方法として,心理実験にてよく用いられる聞き取り調査があるが,主観的な方法であるため客観性に乏しい.そこで,生体信号の一つである皮膚電気反射を計測及び評価することにより客観的に運動を評価することを試みた.皮膚電気反射は手のひらの電気信号を計測するもので,汗腺活動を読みとることができ,それは情動と深い関係があることが知られている.本研究では,電気信号をコンピュータに取り込みデータ解析をできるようにした. 3.ロボットが様々な速度パターンで移動したときの動きを人間に見させ,聞き取り調査及び皮膚電気反射から心理的評価を行った.聞き取り調査は,恐れ,驚き,嫌悪の3項目について5段階評価をしてもらった.その結果,加速度が大きいときに驚きを感じており,速度が大きいときに恐れを感じていることがわかった.嫌悪については特に感じていなかった.皮膚電気反射は先の恐れ,驚きについて反応があることがわかった. 4.先の実験は男性について行ったが,女性についての同様の実験及び評価を行った.その結果,皮膚電気反射は男性と同様に恐れ,驚きについて反応があったが,聞き取り調査には現れなかった.これは,主観評価のみでは精神的な負担を評価することのできないよい例を表しているといえる. 以上より,本研究では移動ロボットの動きを主観的及び客観的に評価し,心理的脅威を与えない運動計画の基本方針を示した.
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