生体内の血流観測などに応用されている超音波パルスドプラ法では、測定できる速度に限界がある。そこで、速度推定に用いるパルスドプラ信号を補間してナイキスト帯域を拡大し、測定できる速度範囲を拡大する方法を検討している。本研究では、提案する補間法を血流観測に適用する場合の問題について、実験的に検討した。 このためにまず、心臓が数回拍動する間の信号データを収集するためのシステムを構築した。このデータ収集システムにより、超音波診断装置内で生成されるパルスドプラ信号を、12bitの分解能で約10秒間にわたり収集することが可能となった。 収集した信号データは、等間隔にサンプルされたデータであるから、これを適当な間隔で間引いて不等間隔にサンプルされたシミュレーション用のデータを作成した。この後、間引きにより作成したデータを補間し、原信号データと比較した。 原信号と、補間して得られた信号の波形はおおむね一致したものの、補間した信号にはサンプルデータの推定誤差(雑音)が大きくなる部分があった。このことは、ドプラ信号を有限個の信号成分の和で近似し、微小時間内の反射体の速度を一定と仮定する本補間法の考え方が、基本的には妥当であることを示している。しかし、サンプルデータの推定において生ずる誤差のために、補間した信号の雑音レベルが、原信号の雑音レベルと比較して約20dB程度増加し、血流からの信号成分の検出を難しくすることが明らかになった。 今後は、補間において生じる雑音を大きくしている原因を特定するとともに、雑音の発生しにくい補間法について検討する予定である。
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