研究概要 |
不規則波全体としての波の連なり特性(前後の波高相互の相関数,高波の平均連長およびgroupiness factor)や特定の波列部分における波の連なりパターンが衝撃砕波の発生に及ぼす影響を明らかにするために,ソリトン列による反射波吸収式造波システムを用いた水理模型実験を実施した.この実験では,水位変動(容量式波高計),模型構造物に作用する波圧(圧力センサー),および模型構造物の変位(加速度センサー)を計測した.その結果,顕著な連なり特性を持つ不規則波の場合には,入反射重複波とは異なる長周期波が模型構造物前面で発生し,砕波位置および砕波規模が大きく変化することが明らかとなった.こうした長周期波は個々波の5〜10倍の波長を持ち,個々波の時空間スケールからは水深の変動と見なされることとなるため,砕波の位置や大きさが個々波の波高のみならず,長周期波の位相にも依存することになる.このため,同じ波高でも,規則波では発生しない衝撃砕波が,不規則波では発生するといったことが現れ,不規則波全体の波の連なり特性が顕著になるほど衝撃砕波の発生確率が増加する傾向が存在することも示された.また,この場合の衝撃砕波は,最近研究が始められてきている2段ステップ上での複合型砕波と同様な形態を示しており,長周期波による水深の変動が2段ステップのような底面形状の変化と同様な効果をもたらすことも明らかにできた.さらに,同じ大きさの高波が連続する場合よりも,徐々に波高を増大させる3〜5個の波が連なった場合の方が衝撃砕波が発生しやすくなることも明らかにした.ただし,この力学的メカニズムについては不明のままであり,実験ケースを増やすと同時に流速などの内部特性に関する詳細な計測および検討が今後の課題として残された.
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