本研究では、渇水に対して耐性の高い水利用システムの整備方策の分析枠組みを構築することを目的として研究を行う。このような分析枠組みの構築に際して、貯水池の整備、操作ルールの改善、水道事業体による代替水源の確保、渇水時料金の導入あるいは減圧給水による渇水時の給水管理等の施策の有効な組み合わせ方に関して資源配分の効率性の観点から考察する。この際、消費者の亨受便益並びに、供給者の亨受便益をも同時に考慮し、これらの和として社会的便益を算定する。本研究では、不確実性下の社会的便益を上述のような施策の組み合わせに対して求める方法を提示することを目的ことを目的として研究を行った。 インフラストラクチャの状況と、渇水による被害の発生プロセスを明示的にモデル化する。具体的には、(1)貯水池システムの整備と取水の安定性、(2)水道システムの整備と給水の安定性との関係、さらには、(3)給水制限方策と水消費者の行動をモデル化する必要がある。これらのモデルは、個別的に開発し、上述のようなインフラストラクチャの整備が、(1)最終的に水消費者の行動をいかに規定するのか、(2)被害の発生確率にいかなる影響を及ぼすのかに関して分析しうるモデルを開発した。 さらに、これらのモデルを用いて、実流域を対象とした政策分析を行った。給水制限に対応した水の市場の均衡を、平常時の均衡と比較することによって、社会的余剰の減少量を、渇水による社会的被害として計量化する。さらに、1.のモデル化により求まるこれらの状況の生起確率を用いて社会的被害の期待値を求める。さらに各々の代替策を比較することで、公平で効率的な水配分を行いうる代替案を試算した。
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