研究概要 |
フェーン現象時の強風下での火災や,地震時火災では,消防力は極度に低下する.消防力が極度に低下し,しかも同時多発型となる火災に対しては,耐震・耐火建物,道路・河川・空地に加えて樹木の防火力を生かした都市そのもののブロック化が最も有効なものとなる.研究代表者は,そのような防災緑地網整備計画構想の支援システムとして,メッシュ型の火災延焼シミュレーション・システムの開発を試みてきた.本研究では,比較的風速が小さいときには,火炎が大きくなり,風横緑地への輻射延焼の危険性があることを認識し,研究代表者のシミュレーション・システムのアルゴリズムの拡張化とそのシステムへの組入れを試みた. 風下方向の緑地メッシュについては,火炎の延焼面と緑地の樹木との位置関係,延焼面からの輻射受熱と樹木の発火ないしは引火限界熱量の関係によるアルゴリズムを開発し,このアルゴリズムに,風横メッシュによる風座標による探索と,焼け止まり分析に基づく,この緑地樹木への輻射熱量の算定法を組入れることで,基本アルゴリズムの拡張化を行った.この拡張化にともなって,緑地メッシュも,シミュレーション進行中に,複数の火炎面から輻射を受けるという状況が発生する.つぎに,この問題に対して,既開発の仮状態変数による状態確定ルーチンの拡張化を行い,シミュレーション・システムへの組入れを行った.そして,メッシュ・マップを想定し,シミュレーションを実施し、拡張システムの基本動作に問題がないことを確認した.また,システムを用いて樹木の高さと風速を変化させシミュレーションを実施し,本システムのより詳細な機能の確認と,防災緑地網の支援システムとしての基本的分析を試みた.そして,風横方向の緑地メッシュが,2m/sという比較的小さな風速下で炎上し,6m/sになると立ち消えとなるケースや,炎上するケースでも,樹木の高さによって,延焼を阻止している時間に差が出てくることなどを示した.
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