研究概要 |
微地形の影響を考慮したサイスミックマイクロゾーニングを行うために十分な強震記録のデータセットは少ない.それを補う目的で地震観測を小田原市において展開してきている.今年度は既に設置した小田原市坊所公民館(BDR)と小田原市立町田小学校(MCD)に加え,さらに1地点地震観測地点を追加した.新しい観測地点は小田原駅の南東側の市街地に位置する幼稚園とし,地震記録の収集に努めている.現在までのところ,新しい観測地点での地震記録は得られていないが,BDRとMCDでは1994年6月から1995年1月までに6つの地震による8記録(24成分)が観測された. BDRは比較的硬質な砂礫台地上の盛土に位置し,MCDは三角州性低地に位置する.6地震のうち,両地点で観測された地震はa)1994年10月4日神奈川県西部地震(M4.3)とb)10月25日神奈川県西部地震(M4.9)の2地震であったことから,これらの地震記録の解析から両地点の地盤特性を比較・検討した.2地震の震央位置はほぼ同じであり,また,観測地点までの距離も両地点とも約20kmと同程度であることから,両地点で得られた記録には震源特性と地震波の伝播特性の影響は同程度とみなせる.従って,観測記録からフーリエスペクトルを計算し,2地震の相乗平均を求め,2地点の比をとることで地盤特性の違いを抽出した. 結果,水平動成分においてはBDRではMCDと比較して,周期0.1秒から0.4秒でスペクトル振幅が5〜10倍大きく,MCDではBDRと比べると周期1秒から2秒で4〜7倍の大きな振幅を持っており,地震記録には明瞭に地盤特性が現れている.上下動成分においても同様の傾向がみられるが,振幅は水平動ほど大きな違いがみられなかった.さらに,多方面から地盤特性の把握を行うために,これらの地震観測地点で常時微動測定を実施した.水平動の上下動に対するスペクトル比を計算したところ,BDRでは0.4秒付近に1次の地盤の卓越周期がみられ,0.1秒付近に2次と考えられる卓越周期があった.全般的に0.4秒以下の周期帯にピークがいくつか存在していた.一方,MCDでは1秒付近に明瞭なピークが確認された.従って,2地点間の地震動のスペクトル比にみられる振幅の違いは,常時微動から推定される地盤の卓越周期付近による地震波の増幅であると解釈できた.
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