研究概要 |
本研究では高気密住宅に適した高効率換気システムの開発と,その効果の検証を最終的目的とするが,今回はその目標達成のために必要な検討事項として,外気に面する部位の気密性能及び多室間気密特性に関する詳細な実験的検討を行った。実験対象は戸建て住宅1住戸,集合住宅2団地3住戸とし,(1)住戸全体気密性能,(2)室全体気密性能,(3)部位別気密性能(シール法,圧力補償法),(4)室間気密性能(囲いこみゾーン法,一括同定法)の測定を実施した。これらの中で室間気密性能の評価は住宅内部の気流流動の正確な予測のために必須であり,今回新たに圧力補償法を複合した囲いこみ法ゾーン法と,1ないし2室の加減圧試験による圧力分布測定結果と連続条件から,隙間特性を最小2乗法を用いて一括同定する手法を開発し検討した。これまでのデータ分析で明らかとなった結果を以下に箇条書きで示す。 〇住戸全体と室全体及び室間気密性 室全体の相当開口面積の合計は,住戸全体の相当開口面積に,室間相当開口面積と室全体相当開口面積の合計は,対象室以外の窓,扉等を開放した条件での室全体の相当開口面積に一致した。これは,今回試みた測定方法が室全体及び室間の気密性能評価法として適当であることを間接的に示す結果である。 〇部位別気密性能と特定できない部位の相当開口面積 部位別気密性能については圧力補償法とシール法で若干の差異が見られた。また,特定できない部分の隙間量の比率は住戸により大きな相違があるが大略床面積に比例するとみなす事ができた。 〇室間気密性能の測定 戸建て住宅では,室間相当開口面積の8割り以上はドア部分で生じている事が確認された。また,1ないし2室を加減圧し,室間の圧力分布と連続条件を用いたから簡易室間気密性能測定法を試みたが,結果として生じる連立一時方程式の条件数が少なくとも10のオーダーであれば比較的高精度の測定が可能である事を確認した。
|