立体化した住空間が形成するミクロなタウンスケープについて、計画への利用を意図したモデルを作成するために、日本国内の次のような先行事例を調査し、成功した側面と問題となる側面とを明らかにした上で、基礎となる資料を収集した。 1)坂出人工土地:国内で初めて大規模に人工地盤を用いた大高正人設計の再開発計画。人工地盤上は非常に良好な環境が実現されているが、下部の通路、駐車場などはあまり良好とはいえない。上下のアクセスが不十分と思われる。 2)広島基町高層住宅団地:1と同じ設計者による高層住宅。人工地盤、屋上庭園、ピロティ、エレベータコア周辺などは良好に利用されているが、階段部分には問題点が多い。 3)三宮センター街:スカイウェイとアーケードがかなり大規模に採用された例。空中の広場はよく利用されているが、空中歩廊にはほとんど利用されていないものがある。 また、立体化した空間については、実現しなかったりあるいは実現を前提としていなかったプロジェクトが影響を与えた場合が多い。そのため、Smithon夫婦や日本のメタボリストたちの構想案についての資料を収集し分析を加えた。 さらに、これらの立体化した住空間をモデル化するために、壁などに囲まれた空間をその中の人間や植物ごと取り出したスペースブロックという表現法を考案した。これは生活の場面を表し、人間とその環境を一体の人間環境系として扱うモデルである。このスペースブロックをCADソフトを利用してコンピュータ上に表現し、ブロックの変形、表面素材の組み替え、ブロックどうしの組み合わせ、合体分割などを表現した。この方法を用いて、調査対象のデータベースを構築した。
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