電気化学-原子間力顕微鏡(EC-AFM)によって単結晶Au上への金属電析初期過程について原子レベルでその場観察し、エピタキシャル成長機構について明らかにした。単結晶Au基板と結晶系が同じであるCu、Agおよび結晶系の異なるTeについて電析を行った。基板はブリッジマン法によって作製した単結晶ロッドから所定の方位を切り出した。電解質水溶液中において前処理を施すことによって平坦で清浄な単結晶Au表面を得ることができた。Au(111)表面とAu(100)表面上へのCu、Agのアンダーポテンシャル析出(UPD)では、溶液中のアニオン種の吸着の影響を受けた被覆率の小さな吸着構造を経てpseudomorphic(1×1)構造を形成した。バルク析出においては、Agの場合、析出速度を大きくした場合(7.5原子層/分)においても完全な層状成長が見られ平坦な薄膜が作製できることがわかった。これに対して、Cuについては、析出速度が大きい場合(5原子層/分)では島状成長するが析出速度を小さく(0.5原子層/分)すると層状成長することがわかった。さらに、Teでは、Au(100)表面上においてpseudomorphic構造を形成することなく(√<2>×√<2>)R45°構造のままバルク析出へと至ることがわかった。また、バルク析出ではTeはAgやCuよりもAuとの結合力が大きいため、析出速度を小さくした場合(0.5原子層/分)においても島状成長した。以上、3種類の金属の電析初期過程についてその場観察した結果、電析薄膜の成長形態は金属の析出速度だけでなく、基板と析出金属間の結合力によって支配されることが明らかになった。また、この結合力はバルク析出電位と溶解電位との差によって評価できることを示した。これらの知見をもとに単結晶Au基板上への化合物半導体薄膜などの高機能性材料の創製が可能であると思われる。
|