クローズドP/Mプロセッシングによる高強度ナノ結晶Al合金バルク材の作製

1994 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 06750730
• 研究機関: 東北大学
• 研究代表者: 河村 能人 東北大学, 金属材料研究所, 助手 (30250814)
• キーワード: アルミニウム合金 / 非晶質合金 / ナノ結晶 / 急速凝固 / 粉末冶金 / 固化成形 / ガスアトマイズ / 押出し成形

研究概要

高圧ガスアトマイズ法により作製したAl_<100-x>(Ni_<0.33>Y_<0.54>Co_<0.13>)_x(9≦x≦15at%)粉末から作製した押出し材の機械的性質について調査するとともに、クローズドP/Mプロセッシングによる押出し材の機械的性質の向上について調査し、次の結果を得た。
(1)高圧ガスアトマイズ法により作製したAl_<100-x>(Ni_<0.33>Y_<0.54>Co_<0.13>)_x粉末の組織は非晶質単相あるいは非晶質とfcc-Alの混相組織であり、これらの合金が高い非晶質形成能を有していることが分かった。この粉末から作製した結晶質の押出し材は、粉末を大気に晒す通常の方法で作製した場合でも、引張強度850MPa以上という従来の超々ジュラルミンの約1.5倍の高強度を有していた。これらの押出し材は粒径が約100nmのナノ結晶組織を有しており、非晶質合金の結晶化が高強度アルミニウム合金を作製するための組織制御法として優れた方法であることが明らかになった。
(2)粉末を大気に晒さないクローズドP/Mプロセッシングにより、Al_<100-x>(Ni_<0.33>Y_<0.54>Co_<0.13>)_x押出し材の強度と延性が大幅に向上した。特に、断面減少率60%(押出し比2.5)という低い加工率でも800MPa以上の高強度を有する押出し材が得られ、より大型の高強度押出し材の作製が可能になった。このように、クローズドP/Mプロセッシングは、大型で高強度・高延性のアルミニウム合金を作製するために極めて効果的であることが明らかになった。また、このクローズドP/Mプロセッシングを用いれば、良好な固化成形度の達成には加工率が低く過ぎると考えられていた粉末鍛造法の適用が可能になることから、高強度アルミニウム合金のニアネットシェイプ化の可能性が大きく期待できる。

研究成果

• [文献書誌] Y.Kawamura: "Mechanical Properties of Nanocrystalline Powder Metallurgy Aluminum Alloys in Grass Forming Al-Ni-Ce-TM(TM:Transition Metal)Systems" Sci.Rep.RITU. A39. 159-164 (1994)
• [文献書誌] Y.Kawamura: "Consolidation Mechanism of Aluminum Based Amorphous Alloy Powders by Warm Extrusion" Mater.Sci.Eng.A179/A180. 1174-1178 (1994)
• [文献書誌] Y.Kawamura: "Al-Ni-Y-Co Alloys Produced from Amorphous Powder by a Closed P/M Processing System" Proceedings of 1994 Powder Metallurgy World Congress. 3. 1793-1796 (1994)
• [文献書誌] Y.Kawamura: "The Effect of Cu on the Nanoscale Al and Amorphous Structure in Partially Crystallized Al-Ni-Ce-Cu(or Ag)Amorphous Alloys" Mater.Trans.,JIM. 35. 95-102 (1994)
• [文献書誌] Y.Kawamura: "The Effect of Additional Cu Element on the Structure and MechanicalProperties of Al-Ni-M(M=Ce or Nd)Amorphous Alloys Containing Nanoscale fcc-Al Particles" Mater.Sci.Eng.A179/A180. 654-658 (1994)
• [文献書誌] 河村能人: "非晶質相の結晶化を利用して作製した高強度P/Mアルミニウム合金" 粉末および粉末冶金. 41. 851-856 (1994)