アルカリ及びアルカリ土類酸化物をモディファイヤーとして含むケイ酸塩、ホウ酸塩及びリン酸塩ガラスをホストとして選び、8種類の希土類イオンPr^<3+>、Nd^<3+>、Sm^<3+>、Tb^<3+>、Dy^<3+>、Ho^<3+>、Er^<3+>、Tm^<3+>の吸収スペクトルを測定した。さらに、各ガラスについて屈折率の波長依存性と密度を調べ、それらの実測値と吸光スペクトルから求めた各f-f軌道間遷移の吸収断面積からレーザーガラスの輻射遷移確率を決定する3つのJudd-OfeltパラメータΩ2、Ω4、Ω6を算出した。 Judd-Ofeltパラメータのガラス組成依存性を調べた結果、ホウ酸塩ガラスのΩ2を除き、Judd-Ofeltパラメータの大きさはモディファイヤーの含有量には依存せず、主にモディファイヤーの種類に影響を受ける。Ω6に線強度が支配されるf-f間遷移のピーク波長はΩ6の大きさに対応して、系統的に変化する。この結果はΩ6が希土類イオンとその周囲に配位した酸素イオンとの間の共有結合性(配位子からf軌道への電子の混じり込み)に依存することを表している。Ω4についてもΩ6と同様の依存性が推定される。一方、Ω2についてはΩ4、Ω6とは異なり、ガラスホストの陰イオン構造に影響を受け、希土類イオンの周囲の配位子が形成する多面体の非対称性に依存することが、研究結果より示唆される。さらに、1.06μmレーザー発振用Nd^<3+>や1.3μm及び1.5μm帯光通信増幅器用Pr^<3+>、Er^<3+>の輻射遷移確率を決定するΩ6が、ガラスホストのイオン充填率に依存することを明らかにしている。Judd-Ofeltパラメータの希土類イオンの4f電子数に伴う変化についても本研究の結果として示している。
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