連続晶析装置で要求されている製品スペック(粒径、分布)を満足させる最適な操作を実現するための操作設計法を開発する目的で、本年度はまず大幅な操作条件の変更を伴うスタートアップ(SU)操作に注目した。多くの場合、SU操作時には種結晶が装置内に添加される。そこで添加される種結晶スペックが、連続晶析装置のSU操作時間に及ぼす影響について検討し、種結晶の設計指針について議論した。実験は既存の連続撹拌槽型晶析装置を使用し、操作温度は外部測定端を有したプログラム精密低温恒温水槽で制御した。あらかじめ粒径の異なる2種のアンバーライトを装置内に懸濁させ、MSMPR(連続撹拌槽)の仮定が成り立つ操作条件を決定した。スタートアップ操作は操作変数として種結晶スペック、操作過飽和度、回転数を選択し、制御変数として粒径分布、溶液濃度、結晶生産量を考慮した。種結晶スペックの粒径分布は単一分散と最終製品粒径分布とし、添加量は最終懸濁密度の値を含む3種類用意した。SU操作時間を評価するために整定時間を決める必要があるが、本研究では滞留時間当たりの質量基準の粒径分布の変動量を評価関数とした。まず種結晶を添加しない場合には整定までに8滞留時間必要なことがわかった。主な結果は以下の通りである。1.種結晶の粒径分布が極端に異なる場合SU所要時間が最大5滞留時間影響される。2.種結晶を添加しない場合と、単一分散の種結晶を添加した場合とは同程度の時間で制定する。3.同一粒径の単一分散の種結晶でも整定後の懸濁密度に近い添加をした方が整定までの時間が短い。4.予測される製品結晶粒径分布に対し、3つの分散を考慮した種結晶を加えた程度でも整定時間は短縮される。これらの成果は化学工学会の年会で口頭発表予定で、また投稿準備中である。
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