気相成長炭素繊維は、炭化水素を含む還元雰囲気下、鉄などの超微粒子触媒を核として成長する。金属超微粒子触媒の活性はその粒径に大きく依存し、気相成長炭素繊維生成には粒径が20〜30nmの粒子が最適である。そこで、この粒径範囲にある超微粒子触媒を効率よく生成する条件を実験、数値計算の両面から求め、繊維を効率よく製造するための指針を得られたので報告する。(1)超微粒子捕集実験:超微粒子触媒を繊維を製造する際に用いる様々な操作条件で、炭素源を流さずに液パルスインジェクション法を用いて発生させ、高温の反応場中で粒子を急冷し、捕集した。捕集した粒子の平均粒径、粒径分布を水素吸着、透過型電子顕微鏡観察で求めた。同じ条件で炭素源(ベンゼン)を流して繊維を製造しその収率を求め、先に求めた粒子径との相関をとると、20〜30nmの粒子数が増えるに従い、繊維の収率も増加することが確認できた。(2)超微粒子成長機構の解析:超微粒子触媒の粒径の成長と分布は、原料となるフェロセンの分解速度と、金属クラスター生成速度、そしてそれらの合一による粒子成長を考慮したpopulation balance式により表現できる。これらの式を用い、高温の反応場での粒子の粒径分布を計算し、20〜30nmの粒子数が最大となる操作条件を求めたところ、実験で求めた条件と一致した。よって、実験、数値計算の両面から繊維を効率よく製造するための条件が明らかになった。このモデルを応用することで、別形状の反応器を用いて繊維を製造する際の操作条件を決定する指針を得ることが可能となった。
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