研究概要 |
1.ポリマー中への気体の溶解度の測定 ポリスチレンに対する二酸化炭素及び窒素の溶解度を圧力降下法により温度100,140℃、圧力20MPaまでの範囲で測定した。溶解度を算出する際に必要なポリマーの体積は気体の溶解に伴うポリマーの膨潤のために変化するが、高温高圧下においては膨潤量の測定が非常に困難であるため、状態式により膨潤量を推算し溶解度の実験値を補正した。その結果、難溶性の窒素に関しては膨潤量が非常に少量であるために補正の影響は小さいが、二酸化炭素に関しては高圧力域において非常に補正の影響が大きく、この補正が絶対に必要であることが分かった。測定結果から温度依存性を検討したところ、二酸化炭素については高温ほど溶解度が低くなるという一般的な傾向がみられたが、窒素については高温の方が溶解度が高いという結果が得られ、臨界温度の低い物質にしばしば観察される逆溶解性を示した。またどの等温線においても溶解度は圧力に対してほぼ直線的に増加した。 2.ポリマー中への高圧ガスの溶解度の推算法の確立 溶解度の測定値に対して溶液論に基づく状態式により相関を行った。状態式としてはSanchez-Lacombeの式とSimha-Somcynskyの式の修正式を用いた。これらの式を用いてポリスチレン中の二酸化炭素及び窒素の溶解度を相関したところ、両式共に良好な相関結果が得られた。従来、Simha-Somcynskyの式は分子サイズのよく似た系に対する気液平衡関係は良好に表現することができたが、本測定系の高分子+低分子系の様な分子サイズの大きく異なる系の気液平衡関係を良好に表すことができなかった。しかし今回修正を加えたところ、高分子+低分子系の帰気液平衡関係も良好に表すことができた。
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