研究概要 |
電気透析槽内で有価金属-EDTA錯体と銅との金属置換反応を行いながら,反応によって生じる有価金属イオンを膜分離する手法により,金属の相互分離を行った。なお本年度は特にニッケルとコバルトについて実験を行った。 実験装置は電極室,フィード室,反応室,ストリップ室,電極室の5室からなる回分循環型電気透析槽であり,反応室の両側は旭硝子社製陽イオン交換膜SELEMION CMVで仕切られている。実験はフィード室に塩化銅水溶液を,反応室にはコバルト,ニッケル-EDTA錯体水溶液を流し,所定の液速度及び電流密度の下で行った。 コバルトあるいはニッケル-EDTA単成分錯体を用いて実験を行った結果,いずれの系においても時間の経過と共に銅イオンがフィード室から反応室へ透過し,反応室内では金属置換反応によって生じたフリーな金属イオンが生成した。また,その一部がストリップ室へ透過し,EDTAから金属が分離・回収される結果を得た。しかし,反応室内で生じる両金属の生成量を比較した場合,ニッケルの方がコバルトイオンの約30%程度と低く,コバルトとニッケルでは銅との金属置換反応速度に大きな違いがあることがわかった。 次に,単成分系における知見を基に,コバルトーニッケル-EDTA錯体を用いてコバルトとニッケルの相互分離を行った。その結果,コバルトイオンは時間の経過と共にストリップ室へ透過するがニッケルイオンの透過には約6時間もの長い誘導期が存在し,この間両金属の分離が良好に進行することがわかった。また,このような各金属イオンの膜透過特性は主に銅との金属置換反応の速度差によって生じているものと考えられるため,金属置換反応が十分に平衡に達した溶液を用いて電気透析を行い,分離係数を比較した。その結果,金属置換反応を生じさせながら電気透析を行った方が分離係数が高くなる傾向を示した。これらの結果より,本手法による金属の高度な分離は主に銅との金属置換反応の速度差によって生じていることが明らかになった。
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