研究概要 |
無機分離膜は、高分子膜など既存の分離膜に比べて高い耐熱性を有するために、高温分離膜やメンブレンリアクターとしてその開発が非常に期待されている。そこで、本研究では、分子動力学(MD)法、量子化学、コンピュータグラフィックス(CG)、などを活用し、無機分離膜素材開発のケーススタディーとして、二酸化炭素高温分離・回収用無機分離膜の分子設計を行った。 アフィニティ付与型分離膜の開発を目的として、密度汎関数法(DFT)と呼ばれる新しい量子化学計算手法を用いて、透過分子と膜間に働くアフィニティを評価した。その結果、チタニア、アルミナ、マグネシア、シリカに対する二酸化炭素および窒素のアフィニティ値が求められた。特に、マグネシアが二酸化炭素と窒素分離を目的としたアフィニティ付与型分離膜素材に適していることが示唆された。 DFTによる計算結果に基づき、シリカ膜と二酸化炭素分子および窒素分子間の二体中心力ポテンシャルパラメータを決定した。このポテンシャルを用いてMDシミュレーションを行ない、シリカ膜による二酸化炭素/窒素の高温分離過程のダイナミックスを再現した。 さらに、新規分子ふるい素材として注目されるカーボンナノチューブを活用した、有機分子の分離過程についても検討を行なった。その結果、工業的に非常に困難とされる2,6-ジメチルナフタレンと2,7ジメチルナフタレンの分離に、カーボンナノチューブが有効であることが明らかとなった。また、分離のメカニズムを原子レベルで明らかにすることができた。 計算結果の迅速かつ的確な把握を目標として、バーチャルリアリティ分子動力学計算システムを開発した。これにより、立体感、臨場感を持った分子像による計算結果の解析が可能となった。
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