中国炭の溶媒抽出を二硫化炭素-N-メチル-2-ピロリジノン混合溶媒を用いて室温で行った。その抽出率は40〜65%と他の地域の石炭に比べて高い値が得られた。最も高い抽出率を与えた棗庄炭(抽出率:65%)からの抽出物をアセトンとピリジンを用いて溶媒分別したところ、ピリジン不溶-混合溶媒可溶の超重質成分が26%含まれることが分かった。各フラクションの硫黄含量は、フラクションの重質性とともに増加する傾向が見られ、抽出残渣中で最も高い値となった。また窒素含量はフラクション中最も軽質なアセトン可溶成分中で低い値となった。原炭の高分子構造の特性として溶媒膨潤値を測定した。その結果、原炭はベンゼン、メタノール中ではほとんど膨潤しないことが分かった。さらに溶媒抽出後の残渣を試料として膨潤値を測定したところ、抽出率の増加とともに膨潤値が増加する傾向が見られた。この結果は、原炭が物理架橋の発達した架橋密度の高い構造であり、可溶成分の除去により多くの物理架橋が解放され、結果として溶媒が浸透しやすくなったためと考えられる。こうした石炭高分子構造内での物質の拡散の程度は、石炭の脱硫・脱硝反応を行う上で大きく影響する。すなわちいかなる反応を行う場合にも、その反応試薬と石炭硫黄・窒素サイトとのaccessibility(近づき易さ)が重要となりその反応率を決定する。そこで原炭のtightな構造を緩和させるために、石炭に対して種々の溶媒を用いて室温から300℃で処理した。その結果溶媒の種類に応じて、可溶成分が増加する系と減少する系が見られた。水素供与性溶媒を用いると水素移動反応が起こり、こうした温和な条件での処理において可溶成分が大きく増加することが分かった。ただしフラクション間での硫黄・窒素量には変化は見られなかった。今後溶媒分別法を利用した石炭中の硫黄化合物、窒素化合物の分離法の開発に展開していきたいと考えている。
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