研究概要 |
本研究においては,多孔質粒子共固定による固定化(増殖)生細胞の活性(総括反応速度)の向上効果と共固定粒子の物性(粒径・細孔率・細孔径・材質等)および固定量との関係を評価した。 1。共固定化後の総括反応速度の変化の測定:固定化生細胞系におけるスタートアップ時の非定常挙動を実験的に検討し,以下の知見を得た。アルコール発酵細菌Zymomonas mobilis NRRL14023をアルギン酸カルシウムゲルに包括固定化し,グルコースからエタノールを生産する反応系を用いた検討の結果,その定常状態に至るまでの非定常過程では固定化粒子の総括反応速度は一旦上昇した後,ピークを迎えてから低下して定常状態に達するが,細胞とともに多孔質粒子を共固定することにより,その変化を緩和し,定常時の総括反応速度を向上させることが可能であることを明らかにした。また,Lactobacillus delrbuckii IFO3534を用いた乳酸生産においても,同様の現象が観察された。固定量(充填率)に関しては,0.4までの範囲では促進効果があったが,細孔率(空孔率)は40〜50%程度では大きな影響は観察されなかった。また,細孔径よりも粒子径の影響の方が総括反応速度に大きく現われる結果となった。 2。各種の共固定粒子と様々な固定量に対する総括反応速度の変化のモデル予測:共固定の際の反応挙動を推算するために,粒内の有効拡散係数の推算に関して,ランダムポアモデルを一般化した新規なモデルを提案し,これを用いた計算手法により,多孔質粒子の空孔率および充填率が共固定化した場合の反応速度に及ぼす影響を評価した結果,定常状態の反応速度の向上をある程度予測することが可能であることが明らかになった。しかしながら,実験結果はシミュレーション結果よりも共固定の効果が大きく,多孔質粒子の形状等のファクターを考慮に入れ,細胞の増殖可能な空間の評価をする必要があることが示された。
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