腹膜透析法では、腎不全患者の腹腔内に電解質の水溶液(透析液)を貯留し、内臓表面を覆う腹膜を介して、体内に蓄積された毒素を除去する。本研究課題申請者らは、これまで市販の電気マッサージ器や低周波治療器を用いて、腹腔内の透析液に体外から非侵襲的に振動を与えることで、毒素の除去速度を飛躍的に増大できることを報告してきた。今年度は腹膜透析法に対して、新たに超音波振動を利用して、タンパク代謝産物(老廃物)の体液からの除去、ならびに生理活性物質の体液中への移行速度を、体外から非侵襲的に制御するための基礎技術を確立した。 尿素(分子量60)、クレアチニン(分子量113)、およびビタミンB_<12>(同1355)を用いた家兎(2.0〜2.5kg)in vivo 実験では、28kHzの超音波により、各々1.62倍、1.55倍、および1.40倍の透過促進率が得られた。また、家兎腹腔内から物理的に剥離した腹壁側の腹膜(壁側腹膜)を用いて、28kHzの超音波によるクレアチニンの透過促進率を測定したところ、1.62倍となった。このことから、in vivo における透過促進効果は、腹膜自身の透過係数の増大に依るところが大きい物と思われた。
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