研究概要 |
本研究は,無電解析出や電解析出,電気化学的溶解析出反応,電気化学的水素吸蔵やリチウムのインターカレーション過程等の電気化学的析出過程の研究に適用できる in situ 薄膜X線回折測定法を新たに開発し,表面生成物の同定や,結晶構造・格子定数の変化等の観点から,その有用性について評価することを目的とし,以下の成果をあげた. 1.テフロンをバルブ材とする硝子製の真空バルブを改造することにより,電極表面に性格にX線を照射し,電解質溶液によるX線の吸収を最低限に抑制した特別の電気化学測定セルを作成した.これを新たに設計・制作した高精度X・Y・Z・θステージを有する薄膜X線測定用ステージにアルミ治具を介して固定した. 2.1.で製作した電気化学測定セルと薄膜X線測定用ステージを用い,LaNi_5やLaNi_<4.5>Al_<0.5>,LaNi_4Co_<0.4>Mn_<0.3>Al_<0.3>等への水素吸蔵・放出過程に伴うα相からβ相への結晶構造並びに格子定数変化を,時間・電位・電流変化と共に in situ に確実に捉えることができ,本手法の有用性を立証できた.しかしながら,本手法による解析は薄膜X線測定に時間がかかること,並びに導電助材や結着材を用いてシート状電極にせざるを得ないという理由から準平衡状態の議論に留まり,合金内の水素の拡散係数等の速度論的評価には適さなかった.そこで,これら合金粒子1個における吸蔵水素の拡散係数評価を微小電極を用いて電気化学的に評価し,10^<-8>cm^2/sのオーダーの拡散係数を有することがわかった.電解に伴う表面酸化皮膜の生成や同定に関しては検出することができず,結論を下すまでには至らなかった. 3.本手法を有機溶媒系,すなわち1M LiClO_4/PC溶媒中におけるZnへのLi析出過程に拡張し,Li/Zn合金の生成過程に伴うγ相の生成を捉えることができ,結晶構造並びに格子定数変化を電位の関数として,分極曲線と対応して議論することが可能となった.
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